篠崎誠の新作『あれから』に私は驚きました。

この映画には、映画ならではの輝かしい瞬間が横溢しています。

彼は映画作家として非常に賢明で、隅々まで計算された演出----この映画の場合は閉ざされた空間の使い方と素晴らしく繊細な音響----によって観客と繋がる映像をつくりあげることに成功しました。

主役の男女の演技が感動的で、深く私の心に響きました。

今の日本映画界に新しい風を送る監督の一人として、これからも篠崎誠に大いに期待しています。

        -----------アミール・ナデリ(映画監督/『駆ける少年』『CUT』)

 

美しい映画である。

東日本大震災が背景として描かれているが、究極的には、記憶についての映画、それも、人間が生きて行くための記憶についての映画だと思う。

桜のイメージには魂が揺さぶられ、不覚にも涙が出た。美しくも楽しい記憶があるからこそ、僕らはなんとか、この辛い人生を生きて行けるのだと思う。

         ------------想田和弘(映画作家/『演劇1』『演劇2』)

 

3.11の後、特に私の脳裏にやきついた光景は被災された方が震災後初めて(特設された)電話で家族と連絡をとる姿でした。

立ってることもできぬほど、その声もその手もふるえ涙と共に溢れていた。

その一声をどれほど待ち望んだのか。
その一声にどれほど尊さがあるのか。
靴紐をきつく結んだ(『あれから』の)祥子の目にも、誰も止めることのできないその一声の尊さが映って見えました。

    ------------宮本りえ(モデル)

 

 

心映えのする、密度の濃い映画だった。したたかに打たれた。

大震災を梃にして、日常のゆるやかな崩壊を耐える『おかえり』の"静謐"世界に篠崎監督がかえってきてくれた。関東圏に住むぼくらの、被災地の様子をニュース映像で見て多分に抑圧してしまった震災実感は、いままで糊塗してきた日常のゆるやかな崩れなのだ。篠崎監督が『おかえり』でも描いていたような。

 踏み越えられない被災地との距離は、踏み越えられない恋人との距離。竹厚綾の祥子はファントムを召喚することでその不可能と向き合い、こつこつと壁をたたき割るほどの激震のなかで目覚めたかったのだと思う。そして、新調の靴を履いて見上げるように「あれから」一歩を踏み出す......

不可逆な時間という距離を、祥子の手元へとひといきに舞い落ちる桜の花弁も、手の震え、瞳の震えとともに心に残る。

 

   ------------後藤岳史(ライター&エディター)

 

この作品の、陶酔しない、説かない、揺らがない、
しずかな『震え』に貫かれている手触りは、
映画にしかできないことのように思え、溜め息がでました。
その「震え」は、こちらに緊張感を生み、それが恐ろしいほど途切れることなく、まるで一本の糸が張られているかのようにかんじさせながらも、
「恐怖」という単純な感情へはリードしない。糸はてぐすの類ではなく、
たとえるならば木綿糸のような手触りで、ふしぎと、やさしいのです。
ですから「美しい愛の映画」ということもできるかもしれないけれど、
わたしは、美しさよりも遥かに挑発的で、愛よりも遥かにやさしい、
誰もがきっと知っている、しずかな『震え』に貫かれた、
いまの世の中へたいする反骨の作品にかんじました。

どうしようもできないことと、どうにかできるかもしれないことの狭間で、
ひとは「揺れる」のではない。「震える」んだ、と思います。
3、11のあのとき、確かに、誰もが震えていたのだと思い出しました。

   ------------唯野未歩子(女優、監督、作家)

 

あれからはそれからでもこれからでもない。

それとかこれとか具体的に手の届いたり目に見えたりする場所にある何かではなく、どこか朧げで、もしかするとそんなものはどこにもないかもしれない何か。

誰にも特定出来ない場所、たとえば空の上にあいた黒い穴に落ちて行くかのような重力を欠いた寄る辺なさとともに、この映画は語られる。

まるでそここそが私たちの生きる場所であるかのように。

悲しみ、怒り、いたみ、喜び、愛?

おそらくそれらのどれとも微妙に違う生きることの震えを、私たちは実感することになるはずだ。

 

                ------------樋口泰人(映画批評家/boid社主)

 

崩壊してしまったのに、認めようとしない。それが不気味だった。

ふてぶてしく戻ってきた日常が、空恐ろしかった。

東日本大震災、福島第一原発事故から数日後のそんな感覚がこの映画でぶり返す。

そして今、ますますふてぶてしく居座るあいつにもたれる自分に気づき、ぞっとする。

 

    ------------町山広美(放送作家)

 

安易に「一日も早い復興を」と口にするけれど、考えてみればどんな場合でも、時間や人の心が完全に元の形に戻ることはありえない。しかしそれでも私たちは、「戻ってほしい」と願い続けることをやめようとしない。

この映画は、矛盾に満ちた人間の姿がこの上なく繊細に描かれた、魂の水彩画だと思う。

    ------------香山リカ(精神科医)

 

名作『おかえり』から二十年。

新作『あれから』が誕生しました!

何事も放り出さない意志をもった可愛い妹が、

いま靴を履いて歩き始めました。

おじさんは大変嬉しいです。

おめでとう!

 

                 ------------寺島進(俳優)

 鮮烈な予兆の映画だった。

何気ない室内が、いつもの通り道が、結婚式場が、いたるところが胸騒ぎに満ちている。

この先にあるのが破滅であってくれるな、と祈りながら私は観た。

 

    ------------黒沢清(映画監督)